はじめに
コムジェネレータとは入力信号の2倍、3倍、4倍、...の高調波を沢山発生させるもので、スペクトルが櫛状(comb)に見えることからそう呼ばれている。時間波形で考えると、一定周期で繰り返す短パルスをつくることでコムが発生する。
ふつうコムジェネレータは、ステップリカバリーダイオード(SRD)という特殊なダイオードを用いて実現される。pn接合ダイオードが順方向バイアスから逆方向バイアスに切り替わる際、蓄積キャリアが抜けきるまでオン状態が続き(逆回復時間)、キャリアが抜けきるとオフ状態へと遷移する(遷移時間)。ステップリカバリーダイオードはこの遷移時間が数十ピコ秒と非常に短く、数十GHzまで伸びる広帯域の短パルスを容易に発生することができる。
しかし、ステップリカバリーダイオードはそう簡単に手に入るものでもない。そこで今回は、ショットキーバリアダイオードを使ってコムを発生させる実験をしてみた。
実験
下図に、試作したコムジェネレータの回路図を示す。入力はファンクションジェネレータで25 MHz、2.5 Vppの正弦波とし、これをショットキーバリアダイオードD1、D2で半波整流する。半波整流回路によって波形の負側が完全にクリップされ、正負が逆転する瞬間に強い歪が発生する。これだけだと基本波成分が強すぎるので、L1とC1のハイパスフィルタを後段に入れている。出力をスペクトラムアナライザで観測する。
(補足:ショットキーバリアダイオードは原理上、逆回復時間はほとんど発生しないため、キレの良い整流作用が得られる。逆回復時間を利用したステップリカバリダイオードとは根本的に原理が異なる。)
試作した基板↓。銅張基板をスジ彫りカーバイトで削ってパターニングし実装した。インダクタは前の記事( ガラスビーズコア高周波巻き線インダクタの自作 - ペEの日記)で紹介したようにガラスビーズに銅線を巻いて作製した。
測定のようす↓。ファンクションジェネレータはOWON製のHDS272S、スペアナはSIGLENT製のSSA3021Xを使用した。
スペアナの測定結果を示す。コム状のスペクトラムが見られた。高周波側の減衰は大きいが、後段にアンプを入れて持ち上げればもう少し使いやすくなると思う。ノイズフロアがわちゃわちゃしているのは、おそらくファンクションジェネレータが出しているノイズが原因だと思う。源振はもう少しキレイな発振器にしたいところ。