BGA616というアンプ

はじめに

今回は、秋月電子で販売されているBGA616というInfineon製のDC~2.7GHz広帯域アンプを評価してみた。

akizukidenshi.com

データシートからFeatureの部分を引用↓

  • 3 dB-bandwidth: DC-2.7 GHz with 19.0 dB typical gain at 1.0 GHz
  • Compression point P1dB=18 dBm at 2.0 GHz
  • Noise figure=2.6 dB at 2.0 GHz
  • Absolute stable
  • 70 GHz fT - Silicon Germanium technology

上からひとつひとつ確認していくと、3 dB帯域幅がDC-2.7 GHzで、1 GHzのゲインが19 dB。P1dB(1-dB compression point)とは、入力電力を上げていくとアンプの出力がサチってきて、ゲインがちょうど1 dB低下する点のこと。P1dB=18 dBmと高出力で使いやすそう。Noise Figure(NF)は付加される雑音の指標。入力雑音レベルが-174 dBm/Hz(熱雑音レベル)のとき、出力雑音レベルは-174 dBm/Hz+18 dB (Gain@2 GHz)+2.6 dB (NF@2 GHz)=-153.4 dBm/Hzという計算になる。Absolute stableは絶対安定、つまりどんなインピーダンス負荷を繋いでも発振しませんよ、ということ。最後に、fT=70 GHzのSiGeプロセスを使っているらしい。

結構良さそうなアンプだと思い、評価してみることにした。

回路

データシートのTest Circuit(下)を参考に、出力ピンからBias Teeで電源を供給する。Bias Teeはインダクタとキャパシタで作る。手持ちに100 nHのチップインダクタ(LQW18ANR10G00D, 自己共振周波数:1.8 GHz)があったのでそれを使うことにした。

下にPCBのレイアウトを載せる。基板は1 mm厚のFR4でFusion PCBに作ってもらった。一晩で適当にレイアウトしたのでSMAコネクタのピッチとかミスったりしたけど、結果的になんとかなった。

測定

測定はスペアナのトラッキングジェネレータを使用した。nanoVNA-F V2も持ってるんだけど、SOLTでキャリブレーションとか面倒くさいのでスペアナにした。バイアス電流(Id)をテスタでモニタしながら、アンプがサチらない程度に入力パワーを-20 dBmに設定して小信号利得を測った。

測定のようす↓

ゲイン vs 周波数の測定結果(0.1~2.1 GHz, Id=0~60 mAで変化)↓。Id=60 mAのとき、ゲインは18.4 dB@1 GHzとなった。Id=10 mA~60 mAの範囲で利得が大きく変わるので、バリアブルゲインアンプとしても使えるかもしれない。

1 GHz, 2 GHzにおけるゲイン vs Idの測定結果↓。

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お友達のJP7VTFさんに余った基板をあげたら、実装して測ってくれた。BGA616のチップも1個分けてもらった(ありがとう~~)。JP7VTFさんはADALM-Plutoというソフトウェアラジオを使って6 GHzまで測定できる環境を持っている。下にJP7VTFさんの測定結果を載せる(許可をいただきました)。2 GHzあたりからだらだらと利得が落ちているが、5.6 GHz帯らへんでも10 dB程度のゲインがあるので、無理をすればここら辺でも使えないこともないかも。