NE76084(GaAs MESFET)の小信号モデルパラメータの抽出

はじめに

以前、秋月電子で200円で売られている高周波用のFET、NE76084(GaAs MESFET)をなんとなく40個購入した。18 GHzとかまでゲインが伸びていて、前からこれ使ってみたいなって思っていた。MESFET(metal-semiconductor field effect transistor)ってあまりなじみがないけど、ゲートをショットキー接合にしたFETで、動作的にはpn接合のJFETと同じなので使う分には難しくないと思う。データシートから、Sパラメータを取得できるので、今回は解析用に小信号モデルのパラメータ抽出をしてみた。

秋月電子のページ(NE76084)↓ akizukidenshi.com

チップの写真。マイクロXというパッケージで高周波用のトランジスタやアンプでたまに見かける。4本足だけど、そのうち2本はソース端子(写真では上下の2本)。

NE76084のチップ

小信号モデル

FETの小信号モデルは下のを使うことにした。名前が「L~」と「Cp~」のパラメータは、パッケージの寄生成分(ボンディングワイヤとかそういうやつ)。真ん中のSRC1は電圧依存の電流ソース(voltage-controlled current source)で、gmは相互コンダクタンス、tauは遅延時間。データシートのSパラはS2Pファイルに書き直して、Qucsに読み込ませた。6~18 GHzでは上手くフィッティングできなかったので、6 GHz以下でパラメータを合わせ込んだ。

FETの小信号モデル(P3:ゲート、P4:ドレイン、GND:ソース)

データシートのSパラ(P1:ゲート、P2:ドレイン、GND:ソース)

以下、シミュレーション結果とモデルパラメータ(一番下の表)を載せておく。結構あってると思う。

S11(左)とS22(右)スミスチャート(赤:小信号モデル、青:データシート)

S21(上)Mag/PhaseとS12(下)(赤:小信号モデル、青:データシート)

パラメータ 単位
Rg 2.06 Ω
Rd 33.0 Ω
Rs 4.08 Ω
Rgs 0.489 Ω
Rds 151 Ω
Rgd 829 Ω
Cgs 282 fF
Cgd 15.1 fF
Lg 183 pH
Ld 450 pH
Ls 77.9 pH
Cpg 143 fF
Cpd 263 fF
Cpgd 27.8 fF
Lpg 215 pH
Lpd 543 pH
gm 52.2 mS
tau 3.65 ps